先に結論から。
ハンディファンが涼しく感じるのは、風そのもののおかげではない。
汗が乾くときに熱を持っていくからで、風はその蒸発を早めているだけ。
だから、汗が乾かない日と、空気が体より熱い日には効かなくなる。
つまり真夏の午後が一番効かない。
一番必要な日に、一番効かない道具になっている。
そのうえで選ぶなら、風量の数字を比べても意味がない。 見るのは別の3つ。
涼しさの正体は「風」ではない
扇風機に当たると涼しいのは、空気が冷たいからではない。
実際、扇風機は空気を冷やしていない。
むしろモーターの熱でわずかに温めている。
涼しく感じているのは、肌の表面の汗が蒸発するとき、
一緒に熱を持っていってくれるから。気化熱と呼ばれるもの。
風は、その蒸発を速くしているだけ。
なので、風が涼しさに変わるには条件が2つある。
条件1:空気が肌より冷たいこと
肌の表面の温度は、だいたい33〜34℃。
気温がこれを下回っていれば、当たった空気は熱を持って行ってくれる。
でも気温35℃だと、空気のほうが肌より熱い。
このとき風は、熱を運び込む側に回る。
ドライヤーの弱風に近い状態になる。
条件2:汗が乾く余地があること
湿度が高いと、空気がすでに水分でいっぱいなので、汗が蒸発しない。
蒸発しないということは、熱が逃げないということ。 風を当てても、汗が肌の上に留まったままになる。
日本の夏は、両方アウトになる
気温35℃、湿度70%。
夏の午後にはよくある数字で、このとき条件1も条件2も壊れている。
- 空気のほうが肌より熱い
- 汗が乾かない
残るのは熱風だけになる。
「去年買ったけど思ったより涼しくなかった」というレビューが必ず一定数つくのは、 商品の質の問題ではなく、こういう理由。
逆に、効く場面はちゃんとある。
気温が30℃前後までの日。
湿度が低い日。
風呂上がり、汗をかいた直後。
室内、脱衣所、台所。
汗が出ていて、それが乾く余地がある状況では、はっきり効く。
「効かない道具」ではなく、効く条件が狭い道具。
1. 稼働時間の「下のほうの数字」
商品名やキャッチコピーに「最大◯時間」と大きく書いてある。 あれは、たいてい一番弱い風での時間。
実際に見比べたらこうなった。
リズム Silky Wind Mobile 4
- キャッチ「たっぷり15時間稼働」
- 説明文「ターボモード運転時間 1時間」
グリーンハウス GH-FANSIG
- 商品名「最長11.5時間の使用が可能」
- 仕様表「稼働時間 約2時間40分〜約11時間30分」
前者は15倍、後者は約4.3倍の差がある。
どちらも嘘は書いていない。
下のほうの数字も、ちゃんと載っている。
ただ、目立つ場所に出るのは長いほうだけ。
だから見るのは、キャッチコピーじゃなくて仕様表。
そして上と下が両方書いてあるか。
上しか書いていない商品は、下を書きたくないということだと思う。
2. 重さ
手持ちタイプは、片手が塞がる。 荷物を持って、スマホを見て、子どもの手を引いて、というときに使えない。
首かけタイプは手が空くかわりに、重さが全部首に乗る。
200gを超えると、長時間は肩が凝る。
ここも、gで書いてあるかを見る。 上の2つはどちらも書いてあった。
- リズム 160g
- グリーンハウス 158g
ほぼ同じ。
3. レビューの件数
★の数より、件数を見る。
- ★5.0 / 5件
- ★4.1 / 452件
信用できるのは後者。
件数が少ない高評価は、まだ何も分かっていないのと同じ。
初期不良や耐久性の問題は、数百件たまってからでないと表に出てこない。
新しいモデルは、いい商品でもレビューが溜まっていない。
悪いというより、まだ判断材料がないという状態。
数字ではないけれど、USB-Cかどうか
今さらMicro USBのものを買うと、そのためのケーブルを持ち歩くことになる。
ここだけは数字じゃないけど、確認しておくと後が楽。
同じ重さでも、中身は違う
さっきの2つ、重さはほぼ同じ160gと158g。
でも最大風量での持ち時間は、1時間と2時間40分。
風を強くすれば、その分早く電池が切れる。
リズムは「風量108%アップ」「2重反転ファン」と書いていて、風量に振っている。
グリーンハウスは3段階で控えめなぶん、最大でも持つ。
どっちが優れているという話ではなくて、設計が違う。
- 短時間だけ強い風がほしい → 風量重視
- 移動中ずっと使いたい → 持続重視
「15時間」も「11.5時間」も、実際に使う時間ではない。
比べるなら、下の数字どうしで比べる。
信じないほうがいい表記
「風速◯m/s」
計測位置が書いていないことが多い。
吹き出し口の真ん前で測れば、数字はいくらでも大きくなる。
顔から20cm離れた場所で、同じ風速は出ない。
「体感◯℃ダウン」
比較対象と測定条件が書かれていないことが多い。
汗をかいた直後に測れば、大きな数字は出る。
そして繰り返しになるけれど、気温が高い日にはその効果自体が消える。
「静音」
風量を上げれば必ず音は大きくなる。
静かさを売りにしているものは、風量を抑えていることが多い。
ミスト付きはどうなのか
肌に水をつけて蒸発させるので、汗が出ていなくても気化熱を作れる。
理屈としては正しい方向。
ただ、水タンクを積むぶん重くなる。
ミスト付きで200g以下、はほぼ成立しない。
湿度が高い日は蒸発しにくいので、効果も落ちる。
髪やメイクに水がつくのも、平気かどうかは分かれると思う。
だから今回は、ミストではなく手が空くほうで選んだ。
実際に効くのはこちら
暑さは「風を足す」より「熱を減らす」ほうが効く。
日陰に入る。
直射日光の下と日陰では体感がかなり違うし、何も買わなくていい。
首の後ろを冷やす。
太い血管が皮膚の近くを通っている場所なので効率がいい。
冷たいものを飲む。
体の内側から熱を下げつつ、水分補給にもなる。
濡らして使う冷感タオル。気化熱を、汗に頼らず外から足せる。
ハンディファンだけが、熱を足す側にも回りうる道具になっている。
結論
ハンディファンは、暑さを解決する道具ではない。
汗を早く乾かす道具で、汗が乾く条件のときだけ効く。
だから、真夏の炎天下用として買うと期待は外れる。
室内や、涼しい日や、汗をかいた直後に使うものとして買えば裏切られない。
暑さそのものをどうにかしたいなら、風を足すより熱を減らすほうが早い。
「暑い」を解決したくて検索している場合、
そもそも道具で解決する問題なのかを先に疑ったほうがいいと思う。
今回見た中で、条件を満たしていたもの
風量重視(160g・最大風量で1時間・レビュー452件)
→ リズム Silky Wind Mobile 4(Amazon)
持続重視(158g・最大風量で2時間40分)
→ [グリーンハウス GH-FANSIG(楽天市場)]
「最大◯時間」しか書いていなくて、仕様表に下の数字がないものは外していい。
